第2回
浅川の野鳥・今と昔
                                日野の自然を守る会 金子凱彦

今回で2回目になりますが、昔(1976年)の浅川のセンサス記録と現在(2021年)の
記録を比べながら、浅川の野鳥たちの変遷をみていきます。
●45年前と同じ調査地とコース 
 
浅川は陣馬山麓に源を発し八王子市、日野市を流れ多摩川に合流する延長30kmの一級
河川です。調査方法は浅川左岸の日野市民プール(川辺堀之内190番地先)から上流の一
番橋を通り運動場・豊田児童グランド(多摩川との合流点から上流へ4.4kmの位置)まで
の1.5kmを歩きながら野鳥の種類と数を記録するのです。できるだけ河川敷を歩くので長
靴は必携で、時には双眼鏡だけでなく三脚を立てて望遠鏡も使いました。当時の堤防は現
在のように舗装されていなく、自転車で通るのも危険という時代もありましたが、浅川を
とりまく自然環境は今日と比べはるかに多様性に富んでいました。

●昔の<調査>結果
1976年4月15日<8:15~9:50>くもり

①コサギ16 ②カルガモ12 ③コガモ160± ④コチドリ5 ⑤イカルチドリ2 ⑥イソシギ1
⑦タシギ3 ⑧キジバト18 ⑨ヒバリ8 ⑩ツバメ5 ⑪ハクセキレイ3 ⑫セグロセキレイ3
⑬タヒバリ23 ⑭ヒヨドリ3 ⑮モズ1♂ ⑯ツグミ33 ⑰セッカ4 ⑱ホオジロ3
⑲カシラダカ3 ⑳アオジ3 ㉑カワラヒワ14 ㉒スズメ96 ㉓ムクドリ7 ㉔オナガ1
㉕ハシボソガラス9 ㉖キジ1 以上26種437羽 ※配列は当時の日本鳥類目録によります。

1976年4月19日<7:00~8:30> くもり
①コサギ7 ②カルガモ11 ③コジュケイ1 ④タマシギ2♂♀ ⑤コチドリ6 ⑥クサシギ1
⑦イソシギ4 ⑧タシギ1 ⑨キジバト10 ⑩ヒバリ15 ⑪ツバメ8 ⑫ハクセキレイ1
⑬セグロセキレイ2 ⑭タヒバリ16 ⑮ヒヨドリ2 ⑯ツグミ51 ⑰セッカ6⑱ホオジロ2
⑲アオジ5 ⑳カワラヒワ7 ㉑スズメ78 ㉒ムクドリ7 ㉓ハシボソガラス5 ㉔キジ1
以上24種249羽

1976年4月24日<7:00~8:30>くもり
①コサギ13 ②カルガモ16 ③コガモ64+ ④コジュケイ2 ⑤キジ5 ⑥タマシギ3
⑦コチドリ7 ⑧イカルチドリ1 ⑨トウネン5 ⑩クサシギ1 ⑪イソシギ3 ⑫タシギ1
⑬キジバト16 ⑭ヒバリ12 ⑮ツバメ5 ⑯セグロセキレイ1 ⑰タヒバリ6 ⑱ヒヨドリ32+
⑲モズ1♂ ⑳ツグミ28 ㉑セッカ4 ㉒ホオジロ1 ㉓アオジ6 ㉔カワラヒワ2 ㉕スズメ78
㉖ムクドリ10 ㉗オナガ27 ㉘ハシボソガラス2 以上28種352羽

1976年4月29日<6:50~8:30>小雨
①コサギ4 ②カルガモ5 ③コジュケイ3 ④キジ4 ⑤タマシギ2♂♀ ⑥コチドリ10
⑦イカルチドリ3 ⑧イソシギ8 ⑨タシギ3 ⑩キジバト8 ⑪ヒバリ14 ⑫ツバメ18
⑬イワツバメ8 ⑭キセキレイ1 ⑮セグロセキレイ3 ⑯ヒヨドリ6 ⑰ツグミ24 ⑱セッカ4
⑲ホオジロ2 ⑳アオジ2 ㉑カワラヒワ2 ㉒スズメ74 ㉓ムクドリ9 ㉔ハシボソガラス5
以上24種222羽

<1976年4月の記録より>
・4月はシギ・チドリ類が華やかでした。イソシギ、イカルチドリ、コチドリ、クサシギ、
タシギ、タマシギ(1回参照)、トウネン(1回参照)、現在では想像できない顔ぶれです。
最新の「東京都レッドリスト(本土部)2010年版」によると、タマシギは「絶滅危惧ⅠA類」
に区分され、近い将来において野生での絶滅の危険性が極めて高いく、ほかの種も「絶滅
危惧Ⅱ類」で、環境が悪化すれば上のランクの「絶滅危惧Ⅰ類」に移行することが確実と
いわれています。なお2021年4月のセンサスで観察できたシギ・チドリの仲間は夏鳥のコチ
ドリだけでした。
・当時冬鳥であったハクセキレイは4月19日が終認です。秋の9月まで浅川で姿を見ること
はありません。
・現在、イワツバメの一番橋への飛来は2月下旬から3月上旬と、ツバメより早いのですが、
当時はツバメの方が早かったようです(今後精査しなければなりませんが…)。なおイワ
ツバメが初めて一番橋で造巣、繁殖したのは1977年でした。詳しくは機会をみて紹介します。

●今の<調査>結果
2021年4月15日<8:30~10:15>晴れ
①キジ2♂ ②カルガモ2 ③キジバト4 ④カワウ5 ⑤アオサギ3 ⑥ダイサギ5
⑦ヒメアマツバメ5 ⑧コチドリ2 ⑨モズ2♂ ⑩ハシボソガラス7 ⑪ヒバリ1 ⑫ツバメ4
⑬イワツバメ30± ⑭ヒヨドリ2 ⑮ムクドリ12 ⑯ツグミ1 ⑰スズメ7 ⑱ハクセキレイ2
⑲セグロセキレイ4 ⑳カワラヒワ5 ㉑ホオジロ2 ㉒ドバト3 以上22種110羽
※配列は現在の日本鳥類目録改訂7版によります

2021年4月19日<8:20~10:10>晴れ
①キジ4♂ ②カルガモ8 ③キジバト4 ④カワウ1 ⑤アオサギ3 ⑥ダイサギ2
⑦コチドリ1 ⑧トビ2 ⑨オオタカ1 ⑩ハシボソガラス4 ⑪ヒバリ2 ⑫ツバメ4
⑬イワツバメ20± ⑭ヒヨドリ7 ⑮ムクドリ8 ⑯ツグミ1 ⑰スズメ7 ⑱ハクセキレイ3
⑲セグロセキレイ1 ⑳カワラヒワ4 ㉑ホオジロ1 ㉒ドバト5 以上22種93羽 

2021年4月24日<8:15~9:55>晴れ
①キジ3♂ ②カルガモ5 ③キジバト4 ④カワウ2 ⑤アオサギ5 ⑥ダイサギ4
⑦コチドリ1 ⑧モズ2♂ ⑨ハシボソガラス6 ⑩ツバメ5 ⑪イワツバメ30±
⑫ヒヨドリ4 ⑬セッカ1 ⑭ムクドリ15 ⑮ツグミ1 ⑯スズメ4 ⑰ハクセキレイ1
⑱セグロセキレイ3 ⑲ホオジロ1 ⑳ドバト4 以上20種101羽

2021年4月30日<8:00~9:30>晴れ
①キジ4 ②カルガモ5 ③キジバト3 ④カワウ2 ⑤アオサギ3 ⑥ダイサギ4
⑦コチドリ1 ⑧カワセミ1 ⑨ハシボソガラス5 ⑩ヒバリ5 ⑪ツバメ3 ⑫イワツバメ20±
⑬ヒヨドリ6 ⑭セッカ3 ⑮ムクドリ12 ⑯スズメ5 ⑰ハクセキレイ4 ⑱セグロセキレイ1
⑲ホオジロ2 ⑳ドバト2 以上20種91羽

<2021年4月の記録より>
・ヒメアマツバメはもともと日本に分布していない種でしたが、1967年に静岡県で初めて
繁殖が確認されました。その後分布を広げ、関東地方から沖縄地方にいたるおもに太平洋
側の地域に留鳥として生息しています。ですから45年前の浅川にはいませんでした。今年
の1月3日のニューイヤーカウントで本種が記録されています。日野でも留鳥です。本調査
地の下流側の高幡橋(多摩川との合流点から2.4km)では今年もイワツバメの巣を利用
して繁殖しているようです。


△イワツバメの巣を利用したヒメアマツバメの巣(入口に羽毛が付いている)高幡橋
 4月11日に岩井満夫さんが撮影

<余談ながら‥…>
天気にも恵まれ45年前とほぼ同じ日で4回センサスを行うことができました。これも高齢
者の特典?ですね。とはいえ「まん延防止等重点措置」に続き、25日から3回目の「緊急
事態宣言」が発令され自粛の日々がまだまだ続きそうです。人との接触を避け身近な浅川
にこれからも通います。