金子凱彦の野鳥調査  53
                                      日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約60,000uの雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池」、「あずまや池」の名が付いています。
 調査は黒川清流公園の東端の中央線脇にあるひょうたん池から西へ黒川防災広場(汚水処理場跡地)、第6公園、山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

調査日 2012年3月1日 快晴、無風

<調査結果>
(1)コサギ1 (2)マガモ8(5♂3♀)  (3)カルガモ20  (4)キジバト2 (5)アオゲラ1
(6)コゲラ1 (7)キセキレイ1 (8)ヒヨドリ4  (9)モズ2 (10)ルリビタキ1 
(11)シロハラ1 (12)ツグミ5  (13)ウグイス1  (14)シジュウカラ19±  
(15)メジロ2  (16)カシラダカ2 (17)カワラヒワ7  (18)ムクドリ5 (19)オナガ3+
(20)ハシボソガラス4 (21)ハシブトガラス4 (22)ドバト6  (23)ガビチョウ4
 
<備考>
・2月29日の晩から降りだした雪は10センチほど積もった。うるう日の降雪は60年ぶりという。本日は仕
 事が休みなので、珍しい鳥(珍しい鳥の行動)との出会いを期待して、雪の積もる雑木林を歩く。
・道路に沿った水路でコサギが熱心に採食していた。片足を揺らし餌を追い出すコサギ独特の採食行動を
 くり返している。
 ただ獲物を捕った様子はなかったが…。最近連日のようにコサギが飛来している。
・モズを2回観察するが、飛翔で雌雄は確かめられなかった。1回目は大池の北側の林をひょうたん池(東)
 へ、2回目はわきみず池の林を西方向へ。これらは別個体と思うが…。そろそろモズも恋の季節になり行
 動的になる。
・防災広場のブッシュ脇でルリビタキの雌を初めて確認する。逆光でよく見ることができなかったが、本調査
 地でルリビタキの姿を初めて見る。
・同じく防災広場で雪の残る地面に降りて採食しているカシラダカを発見する。付近を探すが2羽でだけであ
 った。そろそろ終認か。

調査日 2012年3月12日 快晴、無風

<調査結果>
(1)コサギ1  (2)マガモ8(5♂3♀)  (3)カルガモ7  (4)キジバト7 (5)アオゲラ1
(6)コゲラ1 (7)キセキレイ2  (8)ヒヨドリ10 (9)モズ3(1♂1♀)  (10)シロハラ1
(11)ツグミ1 (12)ヤマガラ1  (13)シジュウカラ18  (14)メジロ2 
(15)カワラヒワ8  (16)オナガ10+ (17)ハシボソガラス3  (18)ハシブトガラス2
(19)ドバト9  (20)ガビチョウ4


<備考>
・中中央線方向からコサギが現れ、わきみず池に付き出た枝に止まる。この枝は慣れている感じである。
 嘴を下にして水面をじっと見つめているが、カワセミのようにその場から突入することはないだろう。調査
 終了後池に寄ると、カルガモを押しのけるようにコサギが池の中を歩いていた。
・遊歩道に向かって体を正面を向けたシロハラが1羽、朝日を浴びて枝に止まっている。胸から脇にかけて
 目立つ黒斑のあるツグミと比べると、胸や腹は淡い褐色で地味であるが、シックでこれがシロハラの魅力
 だ。そろそろ繁殖のため山に帰ろうかと、何か思案顔であった(これは私の考えすぎか…)。
・わきみず池奥(多摩平側)でモズが盛んに鳴いていた。そしてあずまや池では、下記のようにモズの繁殖
 行動が見られた。本日の記録は3羽か2羽か迷うが、状況判断から3羽とする。

<モズの求愛ダンス>
「チョ・チョ・チョ・ピィー・ギイ・ギイ・ピィー・ルルルル…」あづまや池に立つと、澄んだ鳴き声が聞こえてきた。一瞬、聞き慣れない声なのでとまどうが、目の前の横枝でモズの雄が鳴いているのだ。モズのサブソングだ。雄のわきにはそっぽを向いている雌の姿がある。雄は背伸びをするように、身体を細くして、できるだけ伸び上がり、小鳥のようなサブソングを奏でている。
そして眼の上の黒い過眼線(これが雄の特徴)を、雌に示すように盛んに首を左右に振っている。モズの求愛ダンスだ。1分ほどすると、雌がぱっと飛び立ち、わきみず池方向へ(東へ)飛ぶ。すぐギチ、ギチ鳴きながら雄が後を追いかける。うまくこの雌とペアになれるか。なおこの雄は今冬、防災広場周辺を縄張りにしていた個体であろう。雌が他からやって来るのだ。


調査日 2012年2月13日 くもり時々日が差す、無風

<調査結果>
(1)カワウ1 (2)マガモ8(5♂3♀) (3)カルガモ18 (4)キジバト4 (5)キセキレイ1  
(6)ヒヨドリ6  (7)シロハラ1  (8)ウグイス1  (9)シジュウカラ16± (10)メジロ3 
(11)カワラヒワ40+  (12)ムクドリ5   (13)オナガ10+  (14)ハシボソガラス3 
(15)ハシブトガラス2  (16)ドバト8   (17)ガビチョウ2


<備考>
・中央線方向からカワウ1羽が現れる。防災広場を低空で通過し、あずまや池に降りようとするが、池のわ
 きに人が立っていたので、東方向へ低空で飛び去る。大池やあずまや池にカワウが入ると聞いたことが
 あるが、私は観察していない。
 (後日談)2月18日朝8時30分、大池で採食しているカワウ1羽を発見する。私が池の淵に近づいても飛
 び立つことなく、餌採りを続けていた。午後1時半に再び寄ると、カワウはせっせと池に潜っていた、朝と同
 じ個体であろう。ただ翌日からは姿を現さなかった。
・落ち葉をひっくり返して餌を探しているシロハラを観察するが、ツグミはゼロであった。
・多摩平側のケヤキに並ぶカワラヒワの群(40羽ほど)を観察する。この大きな群を除いて、本日は鳥がい
 たって少ない。スタート地点のひょうたん池から大池までの間、1羽の鳥も確認できなかった。なお、昨日の
 七生公園の観察会(より鳥みどり観察会)でもいたって鳥が少なかった。


調査日 2012年3月20日 はれ、無風
  
<調査結果>
(1)カワウ1  (2)コサギ1  (3)マガモ8(5♂3♀)  (4)カルガモ7  (5)キジバト5 
(6)アオゲラ1  (7)ハクセキレイ1  (8)ヒヨドリ5  (9)モズ1♂ (10)シジュウカラ6 
(11)オナガ15+ (12)ハシボソガラス1  (13)ハシブトガラス5  (14)ドバト8


<備考>
・山王下公園上を超低空でカワウ1羽が、黒川公園方向に飛ぶ。目線の高さで一瞬驚いた。
・水路にコサギが入っている。最近多々見るようになった。時には夕方、6時ごろでも姿を見る。
・アオゲラのドラミングが林内に響きわたっていた。遊歩道では散歩の人が、何であろうかと立ち止まってい
 た。繁殖行動に入ったのであろう。朝夕にはアオゲラの鳴き声を多々聞くようになる。
・モズの雄1羽を大池の奥(北側)で見る。かつて付近のネザサのブッシュでモズが繁殖したことがあり、期待
 したがひょうたん池方向(東)に姿を消した。

調査日 2012年3月21日 快晴、微風のち強くなる、風は冷たい

<調査結果>
(1)カワウ1 (2)マガモ8(5♂3♀)  (3)カルガモ5 (4)キジバト4 (5)キセキレイ1 
(6)ハクセキレイ1 (7)ヒヨドリ4  (8)モズ1 (9)シロハラ1  (10)ツグミ1 
(11)ヤマガラ2 (12)シジュウカラ8  (13)オナガ10+  (14)ハシボソガラス3  
(15)ハシブトガラス3 (16)ドバト6


<備考>
・大池でカワウが盛んに水中に潜っていた。マガモと並ぶと意外と小さいく、スマートだ。さすが潜水に適した
 体型である。ただ雑木林の湧水池には似合わないよな(私だけの偏見か?)。
・多摩平第6公園でツグミ、キセキレイ、ハクセキレイが地面を歩きながら採食中。本日のツグミの記録はこ
 の1羽だけであった。
・木に付いた苔をヤマガラがせっせと集めていた。嘴一杯になると、2羽で(もう1羽は巣材をくわえていない)
 林内に姿を消した。付近で造巣中であろう。繁殖期の様子がよく分からない鳥である。巣立ち後のファミリ
 ーを見たことがない。
・わきみず池と大池の中間の多摩平側の林かモズの声がする。東側(大池〜ひょうたん池周辺)のモズか、
 西側(わきみず池〜あづまや池・防災広場)の個体かは不明。ただ今年の春には黒川公園では2組の番で
 きたようだ。

《モズの記録》
黒川清流公園でたびたびモズの繁殖行動を観察したので、センサス時以外も含めてモズの記録をまとめる。
今冬、黒川公園では東側からひょうたん池周辺に雌、大池からわきみず池にかけて雄が、あずまや池から
防災広場にかけて雄が、縄張りをつくって越冬していた。1,000メートルほどの区間で計3羽である。

<2月>
 7日 7:50〜8:00 ひょうたん池西側の林で、雨の中モズの雌が地面に降りては餌を探していた。
25日 7:55〜8:00 ひょうたん池で雄を観察する。ここは雌のテリトリー(上記)であったはずだが…。
<3月>
 2日 7:45〜8:00 ひょうたん池わきのケヤキに雌雄2羽を見る。雄が雌の後を追うが、雌は適当に間を空
     けて、雄を近づけないでいる。
 3日 8:40〜8:50 ひょうたん池に雌の姿を見る。雌が消えた後に雄が姿を現すが、2羽一緒にならなかっ
    た。
 6日 17:30〜17:35 ひょうたん池西側の林をモズ2羽が飛翔、1羽がもう1羽を追っているようであった。
 7日 7:50〜8:00 大池で雌を見る。5分ほどして雄も現れ、雌のそばに止まる。ひょうたん池のペアであろ
    う。
12日 センサス時にあずまや池でモズの求愛ダンスを観察する。ひょうたん池の個体とは別であろう。
    (3月12日の記録を参照)
14日 7:50〜8:00 ひょうたん池の西側の林でモズのサブソングを聞く。しばらくして雄が林床に降りる。
    枯れ草をくわえるが止め(巣材に使用か?)、頭上の枝に移る。この雄のわきをもう一羽(雌?)が
    通過し、中央線に沿って並ぶ人家に消える。すかさずこの雄も追いかける。
26日 7:50 大池の北側の林でモズが盛んに鳴いている。
28日 センサス時、あずまや池から防災広場で行動するペアを観察する。(28日の記録参照)ひょうたん池
     のペアとは別である。

 
●モズの雄(黒い過眼線と翼の白紋が雄の特徴である) ひょうたん池にて岩井満夫氏撮影(2012.2.26)。
余談)山岸哲著「モズの嫁入り」によると、冬の間テリトリーが隣り合っていた雌雄の場合、春になっても雄は
隣の雌とペアになる事がいたって少ない、とある。冬の間、雄と同等にテリトリー争いをしていた気の強い(?
)雌には、春になっても恋心が湧かないのであろう。そろでは、ひょうたん池の雌雄の場合はどうなのか。足
環を付けて個体識別をしていないので疑問が残った。


 
●モズの雌(過眼線は薄い褐色で、雄のような白紋がない) ひょうたん池にて岩井満夫氏撮影(2012.3.13)


お知らせ 
4月の「より鳥みどり観察会」
『七生公園:多摩丘陵は渡り鳥の休憩地』 
※詳細は、観察会ページをご覧下さい

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