金子凱彦の野鳥調査 第82回
日野の自然を守る会 金子凱彦
●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。調査は黒川清流公園の東端の中央線脇にあるひょうたん
池から西へ黒川防災広場(汚水処理場跡地)、第6公園、山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7
kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した、野鳥の種類と数を記録します。
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黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成
●調査日 2014年8月3日、快晴、無風、暑い
<調査結果>
(1)カルガモ6 (2)キジバト3 (3)アオゲラ2+ (4)コゲラ1 (5)ハクセキレイ1
(6)ヒヨドリ8 (7)シジュウカラ21± (8)メジロ+ (9)スズメ2 (10)ムクドリ12
(11)ハシボソガラス5 (12)ハシブトガラス1 (13)ドバト7 (14)ガビチョウ8
<備考>
○黒川清流公園に隣接する多摩平第1緑地のコナラでアオゲラが子育て中であった。岩井
さんの写真のように巣穴からヒナが顔を出していた。7月29日、コナラの近くで幼鳥1
羽が盛んに餌をねだるように鳴き騒いでいた。先に巣を飛び出た幼鳥であろう。
○コゲラの若鳥がひょうたん池の真ん中の石に舞い降りる。すると池の淵にいたハクセキレ
イの若鳥が襲撃、追い回す。コゲラはギーギーと小さな声を出し、近くの木に逃げ込む。
ハクセキレイも木立に入り姿を消す。そして再び池の淵でハクセキレイは採食を始めた。
今度はトンボを追い始める。これは餌として追っているのであろう。付近にハクセキレイ
が定着し。毎日姿を見ることができる。
○20羽ほどの群れのシジュウカラが、低木林で気忙しく採食中であった。ほとんど(すべ
て?)が幼鳥(若鳥)である。
○ひょうたん池の北側でメジロ10羽ほどを観察する。7月30にもここでメジロ10羽ほ
どを見ている。
△黒川公園のアオゲラの親子、8月2日 撮影:岩井満夫さん
<アオゲラの巣立ちの記録>
7月29日、巣立ったアオゲラの幼鳥が盛んに鳴いていた。
7月31日、アオゲラが子育て中のコナラの巣を岩井さんが撮影する。
8月 2日、巣穴のヒナは2羽である。
8月 3日、ヒナ1羽が巣立つ
8月 4日、最後の1羽が巣立つ。
●調査日 2014年8月12日 くもり、無風
<調査結果>
(1)カルガモ8 (2)キジバト2 (3)カワセミ2 (4)ハクセキレイ1 (5)ヒヨドリ2
(6)シジュウカラ1 (7)オナガ6+ (8)ハシボソガラス4 (9)ドバト16 (10)ガビチョウ2
<備考>
○清水谷公園の池で横枝に止まっているカワセミの幼鳥を1羽観察する。もう1羽が池の奥
にいるようだが確認ができなかった。後日、岩井さんが幼鳥2羽を観察、撮影をしている。
6月4日に岩井さんが、ここでカワセミの親子2羽の写真を撮っている。今回は2回目の
繁殖か?
○シジュウカラは声を1回聞いただけであった。本日はいたって鳥が少ない。
△6月4日 清水谷公園でカワセミの親(左)が幼鳥(巣立ちビナ)に餌を与える
撮影:岩井満夫さん
●調査日 2014年8月21日 晴れ
<調査結果>
(1)カルガモ8 (2)キジバト3 (3)ヒヨドリ10 (4)スズメ1 (5)ムクドリ3
(6)オナガ6+ (7)ハシボソガラス4 (8)ハシブトガラス2 (9)ドバト15
(10)ガビチョウ8
<備考>
○いささか鳥が少ない。シジュウカラにも出会なかった。
○ヒヨドリは幼鳥が多かった。
●調査日 2014年8月28日 くもり、時々小雨
<調査結果>
(1)カルガモ6 (2)アオゲラ1 (3)ヒヨドリ3 (4)ジュウカラ2 (5)オナガ2
(6)ハシボソガラス2 (7)ハシブトガラ1 (9)ガビチョウ4
<備考>
本日の天気予報によると、日中23度でで、10月上旬並みとのこと。いやはや急に涼しく
なる。ただ黒川の鳥はいたって少ない。
○防災広場よりアオゲラの声が1回聞こえたが、姿は確認できなかった。
<本のご案内>
日野市内の中央線や京王線の駅周辺では、今年も多くのツバメが子育てをしています。
単行本の『銀座のツバメ』は銀座の話だけでなく、ツバメのあまり知られていない生態、なぜ人の
そばで巣作りするのか? などツバメ全般の解説書でもあります。また「ツバメ・シール」など日野
の話も多数載っています。
『銀座のツバメ』
『銀座のツバメ』
金子凱彦著 佐藤信敏写真
定価 1500円+消費税/四六版 カラー口絵付き 188頁
発売・学芸みらい社
◆書店や、アマゾン他のネット書店で注文・購入できます
「はじめに」より抜粋
ツバメは越冬地の東南アジアから、春になると繁殖のために日本に帰って来る。このスマートな
小さな渡り鳥にはいくつもの、あまり知られていない、“秘密”がある。
海を越え、2ヵ月におよぶ長旅を終えたツバメたちが、ペア(番)を作るまでの数々の試練。雌が
浮気をしないように、ライバルの雄からパートナーを守る雄の気苦労。それでも巣の中のヒナが、
雄の子でないことも珍しくなく、三角関係の喧嘩が観察される。
多くの野鳥と異なり、土と枯れ草だけを使う独特な巣作り、飛ぶ虫しか餌にしないツバメが編み
出した、“つばめ返し”の技。一日に300回も餌を運ぶ、忙しい子育て、そして、感動的なヒナの
巣立ち。さらに人の存在をうまく利用する特異な繁殖形態――。ツバメの生活は、謎と波瀾に満
ちている。