金子凱彦の野鳥調査  116回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園の東端の中央線脇にあるひょうたん
池から西へ黒川防災広場(現在マンション建設中)、多摩平第6公園、山王下公園、清水谷公園の
池まで約
1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した、野鳥の種類と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2017年6月3日 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ14 (2)キジバト6 (3)ダイサギ1 (4)アオゲラ1 (5)ハシボソガラス6
(6)ハシブトガラス3 (7)シジュウカラ10 (8)ヒヨドリ8 (9)ムクドリ2 (10)ドバト5
(11)ガビチョウ5


<備考>
○ダイサギが第6公園上空からマンション屋上を通り中央線方向に通過する。青空をバック
 に優雅に飛ぶダイサギの純白が鮮明であった。
〇公園内で巣立ったのか、7羽ほどのシジュウカラの若鳥に遭遇する。
 

●調査日 2017年6月14日 くもりのち晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ9 (2)キジバト4 (3)ツミ1 (4)カワセミ1 (5)ハシブトガラス4
(6)ハシブトガラス4 (7)シジュウカラ1 (8)ヒヨドリ5 (9)ムクドリ8 (10)コジュケイ1
(11)ドバト8 (12)ガビチョウ3


<備考>

〇カルガモの幼鳥は6羽になってしまった。昨日は8羽いたのだが…。このファミリーは
 ひょうたん池にいることが多い。
〇ツミの声が聞こえたが、営巣等は不明である。
〇コジュケイが大きな声で鳴いていた、数年ぶりに聞くチョットコイだ。

●調査日 2017年6月23日 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ9 (2)キジバト4 (3)カワセミ1♂ (4)ハシボソガラス2 (5)ハシブトガラス3
(6)シジュウカラ2 (7)ヒヨドリ6 (8)ムクドリ3 (9)スズメ2 (10)ドバト1
(11)ガビチョウ3


<備考>
〇カルガモの幼鳥6羽は元気でいる。
〇清水谷公園の池で時々カワセミの姿を見るが、繁殖等は不明である。

●調査日 2017年6月29日 くもり

<調査結果>
(1)カルガモ9 (2)キジバト4 (3)アオサギ1 (4)ダイサギ2 (5)アオゲラ1
(6)ハシボソガラス5 (7)ハシブトガラス3 (8)シジュウカラ2 (9)ヒヨドリ2 (10)ムクドリ70±
(11)スズメ1 (12)ドバト2 (13)ガビチョウ4

<備考>
○アオサギ、ダイサギが中央線方向から飛来し黒川上空を多摩平方向に飛ぶ。多摩川に
 行くのであろう。
○アオゲラの小さな声を聞くが営巣等は不明である。
〇山王下公園から中央線にかけてムクドリの群が飛び交う。70羽ほどであった。
〇カルガモの幼鳥たち6羽は健在だ。大分大きくなった。
                                              
   
 △5月29日、生まれたヒナは11羽    △約1か月後の6月28日には6羽になるが
                     母親の2/3ほどの大きさまで成長した


<特記事項>
黒川清流公園に隣接する空き地に本年4月にカワセミハウスがOPENした。それに付随して
周辺の自然環境が変わった。今後どのように緑地を守っていかなければならないか、危惧
することなどを「自然を守る会」の会報7月号(7月1日発行)に投稿をしたので転載をする。

「駐車場でなく緑地の再生を」 金子凱彦
 黒川清流公園(東豊田緑地保全地域内)に隣接する多摩平下水道処置場跡地に本年4月に
カワセミハウス(東豊田3丁目)がオープンしました。下水施設が稼働していた1970年当時
は付近を通るとほんのり?人糞の匂いが漂っていたことなどを覚えています。その後市内
の下水処理の完備により使用されなくなり、長い間手つかずの空き地になっていました。
 跡地(市有地)は上下に分かれており下段の約5600平米のうち約4000平米を売却(現在
マンションになっている)、残り約1600平米にカワセミハウスが建ったのです。上段の約
3400平米は緑地として保全するということですが、どのように利用するか決まっていない
ようです。
 この上段(写真①)で毎年モズが繁殖していましたが、今年は整地により(写真③)営
巣場所を失いました。黒川清流公園では数年ここを含め2か所で繁殖していたのですが、
今年は1か所になりました。モズは動物食で生態系の上位に位置する鳥です。小さな猛禽
といわれるこのモズが減ることは、自然環境の悪化を示すものと捉えてもよいでしょう。
 
 
①2016年10月 上段は野鳥が多く集う緑地だった。右下が建設中のマンション

 同じく上段に隣接する「あずまや池」わきの木立は、かつてコサギが休息の場所に使
っていました。近年は夜行性のゴイサギが日中羽を休めていることもあります。今回の
工事でこの木立の一部が失われました。下段のヒマラヤスギやメタセコイアの高木も消
えました。私たちの知らない豊田の昔を見てきた木々が無残にも切られたのです(写真②)。
 
 
②2017年3月、下草はもちろん、大きな木々もなぎ倒された。このままでよいであろうか。
 
 これからこの上段をどのようにしたらよいのか? 緑地を次世代に残すためにまず切
った木と同じ本数の木を植えることです。特に「あずまや池」に接する東端に植えること
です。カシなどの常緑樹がよいでしょう。池は木々に囲まれてヒトの干渉から野鳥たちを
守ってきました。カワセミが冬の塒(ねぐら)に利用していたこともあります。黒川公園
ではいたって珍しい冬鳥のトラツグミが餌場として利用していました。今年5月27日にカ
ルガモのヒナ11羽が突然池に姿を現しました。周辺で孵化したのでしょう。野鳥たちのた
めにもサンクチュアリ(聖域)的なこの環境を守りたいものです。
 カワセミハウスを利用するために一部の市民から駐車場が欲しいとの要望もあるようで
すが、近くにAEONモールの駐車場があります。ここは日野市との協議により公共駐車場に
なっているのです。これ以上必要ないでしょう。黒川公園を取り巻く自然環境は日々悪く
なっています。市有地であるこの地に緑地保全地域に恥じない緑の環境を作り、後世に残
したいものです。そのために皆で知恵を出し合いましょう。


③同年4月(①とほぼ同じ所から撮る)
「多摩平第1緑地」の看板に恥じない環境づくりを!