金子凱彦の野鳥調査  124回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園東端の中央線脇にある「ひょうたん
池」から西へカワセミハウス(2017年4月OPEN)、マンション・ヴィ-クコ-ト豊田、多摩平第6公園、
山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類
と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2018年2月7日 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ8(4♂4♀) (2)カルガモ26 (3)キジバト7 (4)アオサギ1 (5)カワセミ1
(6)モズ3(2♂1♀)(7)ハシボソガラス5 (8)ハシブトガラス1 (9)ヤマガラ3 (10)シジュウカラ9
(11)ヒヨドリ6 (12)ウグイス1 (13)メジロ1 (14)ムクドリ2 (15)ジョウビタキ1♀ (16)ドバト7


<備考>
○清水谷公園でアオサギが腹まで浸かって池に入っていた。餌を求めていたのだろうか。
〇モズを5カ所で観察するが、本調査地では雄2羽、雌1羽であろう。翌日の2月8日に大池でモズ
 のペアが岩井満夫さんにより撮影された。モズはこれから繁殖のシーズンになる。
 
 △モズのペア(左が雄)が仲睦まじく並んでいた。撮影:岩井満夫さん

●調査日 2018年2月14日 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ8(4♂4♀) (2)カルガモ21 (3)キジバト5 (4)モズ2♂♀ (5)ハシボソガラス7
(6)ハシブトガラス2 (7)ヤマガラ2 (8)シジュウカラ5  (9)ヒヨドリ4 (10)ウグイス1
(11)ツグミ2 (12)ジョウビタキ1♀ (13)キセキレイ1


<備考>

〇モズは大池北側で雄、わきみず池西側で雌を観察するが、雌雄一緒の行動は見られなかった。
〇朝の日差しに春の気配を感じるようになった。ただ本日はいたって鳥が少なく、ドバトの姿
 もなかった。ただ一昨日(12日)レンジャク5羽が出たということで大勢のカメラマンの姿が
 あった。

●調査日 2018年2月19日 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ8(4♂4♀)(2)カルガモ20 (3)キジバト2 (4)ハシボソガラス4 (5)ハシブトガラス1
(6)ヤマガラ4 (7)シジュウカラ7 (8)ヒヨドリ3 (9)ウグイス1 (10)エナガ2
(11)ヒレンジャク5 (12)ムクドリ3 (13)シロハラ1 (14)ツグミ4 (15)ドバト3


<備考>

〇ヤマガラは2羽での行動であった。エナガも2羽であった。両種とも本調査地で繁殖をしている。
〇第2コーポラス前のケヤキのヤドリギでヒレンジャクを観察する。昨日キレンジャクを撮影した
 人もあったと聞く。1~2羽が混じっているようであるが、私は観察していない。連日多くのカ
 メラマン(時には30人以上)が集まっている。レンジャクはわきみず池(下の写真)の湧水
 に降りることもあるが、レンジャクにとってはいたって迷惑であろう。
 
 △レンジャク狙いのカメラマン諸氏 2月19日

●調査日 2018年2月26日 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ8(4♂4♀)(2)カルガモ17 (3)キジバト6 (4)アオサギ1 (5)カワセミ1♀
(6)ハシボソガラス12 (7)ハシブトガラス1 (8)シジュウカラ4 (9)ヒヨドリ3 (10)ムクドリ3
(11)ツグミ3 (12)ジョウビタキ1♀ (13)カシラダカ2 (14)アオジ2 (15)ドバト3


<備考>
〇2月に入ってからあずまや池にマガモの雌雄(各1羽)が休んでいることが多くなった。今まで
 この池ではめったにマガモを見なかったが…。
〇清水谷公園の池の淵にアオサギが止まっていた。人が通ると警戒して飛び立つが、すぐ引き
 返し、池前の人家の屋根に止まる。池に固守しているようだ。
〇あずまや池のワサビ畑のフェンスにカワセミの雌が飛来する
〇カシラダカ、アオジをあずまや池の北斜面で観察する。岩井さんがカシラダカ5羽を2月21日
 に観察しているが、今冬のカシラダカの記録は2月に入ってからだ。

<その他の事項>
本会発行の「日野の自然」3月号(No.548)のコラム「ひろば」に黒川清流公園の下草刈につい
て投稿したので転載します。



<ひろば>

           藪は野鳥たちにとって大切な環境なのです
                                   金子凱彦
 私の鳥仲間(黒川公園の仲間)の岩井満夫さんから、怒っているシロハラの写真(1)を送って
いただきました。なるほどこれは怒っている顔ですね、なぜ怒っているのでしょう。
 シロハラは秋に中国やロシヤから日本にやって来る冬鳥です。黒川清流公園(以下黒川)に
は毎年姿を現しますが単独で行動していることが多く、黒川全体で2~3羽と数は多くありません。
藪のある薄暗い林を好み落ち葉の下で冬を越している昆虫類などを食べています。人の気配が
あるとすぐ藪に隠れます。シロハラにとって藪は天敵から身を隠す場所でもあるのです。
 越冬地で餌が充分に採れないと繁殖地での繁殖に影響する、個体数が減るといわれています。
多くの子孫を残すために良き環境を求めてはるばる南の日本にやって来るのです。藪の喪失は
死活問題です。シロハラでなくとも昨今の草刈りには考えさせられます。

 
(1)本日2/1 シロハラが 笹がない と怒っていました。岩井満夫(Mailヨリ)

 
(2)下草のネザサなどがすべて刈り取られた斜面 
 写真の中央部のサクラの木でかつてアオゲラが繁殖しました。当時斜面一面は藪で覆われ
て人がたやすく近づけない聖域でした。今でも周辺でアオゲラを見ることがあるのですが、アオ
ゲラの目からこの林はどのように映るでしょうか。
 藪を好むガビチョウの姿を見なくなりました。中国からの外来種で1年中囀っているにぎやか
な鳥です。日本での分布が広がっており話題になっていますが、私の最近の黒川ロードセン
サスでは出現ゼロの日が続いています。また外来種では先輩のコジュケイも藪を好みますが、
黒川では姿を消して久しくなります。黒川を取り巻く周辺の環境が変わったことも考えられます
が、昨今の手入れの行き届いた黒川ではすみにくくなったのでしょう。2種とも外来種ですが、
多くの在来種にも影響はあるとおもいます。
 とはいえモズには好ましい環境になりました。モズは動物食の鳥で時には小鳥を狩ることもあ
りますが、おもに地表の昆虫類を餌にしています。このように見通しがよいと餌を探しやすくなり、
草刈り後はこの周辺でモズの姿を多々見るようになりました。しかし困ったこともあります。モズ
は木々の葉が茂る前の早春に繁殖に入るのです。今年は2月8日にペアが観察されました(写
真3)。そのため黒川では背丈ほどもあるネザサで毎年繁殖をしています。この環境(写真2)で
は巣を作る所がありません。困りました。

 
(3)モズのペア(左が雄)早くマイホームを探さねばなりません 撮影:岩井満夫さん

 
(4)丸坊主にされた水路わきのクマザサ、ササの間から空が透けて見える

 雑木林の葉が落ち緑の少ない冬、緑の大きな葉で覆われていたクマザサは冬の貴重な緑です。
400メートルほど水路に沿って続いており、公園のわきを通る人はこの緑で慰められます。それが
何と葉が全部むしり取られたのです(写真3)。幅も大きく削られ車道から反対側が透けて見えるよ
うになりました。この藪をすみかにしている野鳥たちに代わって一言いわせてもらいます。
 冬鳥のアオジ、ウグイス、シロハラ、留鳥のシジュウカラ、メジロ、ガビチョ、スズメがここを餌場にし
ています。時には隠れ場所にも利用しています。とくに藪を好むウグイスはチャッ、チャッと鳴きなが
ら(笹鳴き)クマザサの中を活発に動き回っています。メジロの群が葉に付いたアブラムシをせっせ
と忙しげに採食しているのを「日野の自然を守る会」の観察会で見たこともありました。何のために
葉をむしり取ってしまったのでしょうか?理解に苦しみます。
 昨今「生物多様性」が声高らかに叫ばれていますが、身近な足元の環境にも目を向けて欲しいも
のです。下草を刈ることで日の光が入り育つ植物もあります。好む野鳥もいます。一方暗い茂みや
落ち葉の下で冬を越す虫やそれを食べるシロハラや同じく冬鳥のルリビタキなどは冬を越せなくな
ります。下草を刈るときは部分的に刈らない所を残すなど、多様な生き物への心やさしいきめ細か
い配慮が必要ではないでしょうか