金子凱彦の野鳥調査  128回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園東端の中央線脇にある「ひょうたん
池」から西へカワセミハウス(2017年4月OPEN)、マンション・ヴィ-クコ-ト豊田、多摩平第6公園、
山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類
と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2018年6月1日(金) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ5 (2)キジバト2 (3)ダイサギ1(OH) (4)オオタカ1 (5)シボソガラス3
(6)シジュウカラ5 (7)ヒヨドリ9 (8)ムクドリ6 (9)スズメ1 (10)ドバト6

<備考>
〇いたって鳥が少なかった。昨年(17年)の6月3日は11種、合計61羽であった。うちカルガモの
 幼鳥10羽がいた。
 

●調査日 2018年6月9日(土) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ3 (2)キジバト1 (3)ハシボソガラス1 (4)ハシブトガラス3 (5)シジュウカラ20±
(6)ヒヨドリ6 (7)ムクドリ11 (8)スズメ1 (9)ドバト12 (10)ガビチョウ1


<備考>

〇幼鳥を多数含むシジュウカラの群れに出会う。高木の枝から舞い降りて地表で採食したり、
 ネザザにもぐり込んだり林の環境を利用しながら活発に行動していた。時には目の前の梢に
 あどけない幼鳥が近づいて来たりして、短時間ではあったがシジュウカラと楽しい時を過ごす
 ことができた。


●調査日 2018年6月21日(木) くもり

<調査結果>
(1)カルガモ3 (2)キジバト1 (3)ハシボソガラス3 (4)ハシブトガラス3 (5)シジュウカラ2
(6)ツバメ8  (7)ヒヨドリ5 (8)ムクドリ34 (9)スズメ1 (10)ドバト8
(11)ガビチョウ2


<備考>

〇雨上がりの朝のためかツバメを多く見かけた。豊田駅周辺では例年になく多くのツバメが
 営巣している。
〇高木の樹冠部で多数のムクドリが忙しげに採食をしていた。結構奇妙な声?で鳴き騒いで
 いた。
 

●調査日 2018年6月28日(木) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ2 (2)キジバト2 (3)アオゲラ1 (4)ハシボソガラス5 (5)ハシブトガラス2
(6)シジュウカラ1 (7)ツバメ1 (8)ヒヨドリ9 (9)ムクドリ23  (10)スズメ3
(11)ドバト2


<備考>
〇久しぶりに大池でアオゲラのけたたましい鳴き声を聞く。池の東側そして西側で鳴き、南側の
 人家の間を一直線に中央線方向に消えた。以前であれば林内を鳴きながら移動していたの
 であるか、どこに行ったのか?アオゲラが黒川に戻れば良いのだが…。
〇ツバメ1羽がカワセミハウスの上を西方向(豊田駅方面)にまっしぐらに飛んで行った。
 豊田駅周辺では(駅から300メートル以内)6月30日現在、5カ所で巣立ち、4か所で育雛中、
 4か所で抱卵、1か所で造巣中である。これだけの数の営巣を私はかつて記録したことがない。


<特記事項>1
今年も日野市内でツミが営巣した。6月21日昼、ちょうど私も5羽の巣立ちに立ち会うことができた。
ツミの巣の近くではオナガが複数営巣していた。

△ツミの巣立ち 6月21日 撮影:岩井満夫さん

<特記事項>2
「日野の自然」2018年7月号の「ひろば」に黒川清流公園の野鳥について投稿したので転載をする。
 
 
黒川清流公園のさびしい春 (Silent Kurokawa)             金子凱彦 写真:岩井満夫

 今年はさびしい春になりました。黒川清流公園で毎年繁殖をしていたモズが姿を消してしまったの
です。早春、まだ木々の葉がでそろわない頃から繁殖に入り、5月には子育てを終えていた鳥です。
かつて黒川清流公園を含む東豊田緑地保全地域(6ha)では3番が繁殖していましたが、環境の変化
によりこの数年は黒川清流公園の1か所になってしまいました。そして今年はゼロになりました。モズ
は小さな猛禽ともいわれ、餌は昆虫類などで時には小鳥も捕食する生態系では上位に位置する鳥
です。雑木林や耕地の豊かさを示すシンボル的な鳥なのです。
 そしてこの数年繁殖が確認されていたアオゲラも春になり姿を見ることができなくなりました。足環
を付けた雄が数年前より観察されており、昨年まで黒川公園で毎年繁殖をしていたのですが、最近
さっぱりその姿を見ません。アオゲラはもともと森林性のキツツキでしたが近年平地の林に進出する
ようになり、黒川公園では2000年頃から定着するようになりました。この大きなキツツキに黒川は嫌
われてしまったのでしょうか。
 嫌われたといえばウグイスの声(ホーホケキョ)を今春はチョッとしか聞くことができませんでした。
私の黒川センサスの記録によると3月17日~4月4日に時々声を聞いただけで、以後の記録はありま
せん。ウグイスは黒川を去ってしまったのです。かつて7月中旬まで囀っており繁殖しているのではな
いか、とひそかに期待したこともあったのですが、藪を好むウグイスにとって今の管理の行き届いた
黒川は棲みにくいのでしょう。
 春の風物詩とのいえるカルガモの親子。昨年はあずまや池で11羽のヒナを見たのですが、今年は
黒川清流公園に4つある池のどこにもヒナたちは姿を現しませんでした。さびしい限りです。
 黒川清流公園の北側、多摩平の地に今大型マンション群の建設が進められています。黒川を取り
巻く自然環境はさらに厳しくなります。都市公園的景観だけにとらわれることなく、黒川の森を拠り所
にしている諸々の生き物にも目を向けて欲しいものです。このままだと野鳥の棲めない沈黙の森にな
ってしまいます。
   
△餌をねだるモズの巣立ちビナ(右)
  (2017年5月6日)
  △アオゲラの親子(2016年6月12日) 
     
     
△囀るウグイス(2017年4月19日)     △カルガモの親子(2017年5月27日)