金子凱彦の野鳥調査  137回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園東端の中央線脇にある「ひょうたん
池」から西へカワセミハウス(2017年4月OPEN)、マンション・ヴィ-クコ-ト豊田、多摩平第6公園、
山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類
と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2019年3月5日(火) 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ9(5♂4♀) (2)カルガモ18 (3)キジバト7 (4)ダイサギ1 (5)コゲラ1
(6)ハシボソガラス3 (7)シジュウカラ6  (8)ヒヨドリ9 (9)エナガ4  (10)ムクドリ2
(11)ツグミ1  (12)ハクセキレイ1  (13)ドバト6 (14)マルガモ1

<備考>
〇大池にこの数日ダイサギが飛来している。警戒心がうすく?池のふちに人が立っていて
 も動じない。
〇あきみず池東側と山王神公園でエナガ2羽(ペア?)をよく見かける。近くで営巣をす
 るのであろう。
〇真冬に比べて鳥が少なくなってきた。
 

●調査日 2019年3月9日(土) 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ8(4♂4♀) (2)カルガモ19 (3)キジバト6 (4)ダイサギ1 (5)ハシボソガラス3
(6)ハシブトガラス2 (7)シジュウカラ10 (8)ヒヨドリ7 (9)ジョウビタキ1♂ (10)スズメ1
(11)カワラヒワ2 (12)ドバト4 (13)マルガモ1

<備考>

〇カワセミハウスの北側でジョウビタキを観察する。今冬定着していた個体であろう。な
 お3月14日にも同じ所で見るが、そろそろ終認であろう。
〇カワラヒワが多摩平第6公園に降りて採食していた。春になると稀に見かけるが、久し
 ぶりである。


●調査日 2019年3月20日(水) 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ6(3♂♀3) (2)カルガモ14 (3)キジバト1 (4)コゲラ2 (5)アオゲラ1
(6)ハシボソガラス5 (7)ハシブトガラス1 (8)ヤマガラ2 (9)シジュウカラ9 (10)ヒヨドリ2
(11)ウグイス1 (12)ムクドリ3 (13)シロハラ1 (14)ツグミ4 (15)ハクセキレイ1
(16)ドバト5  (17)ガビチョウ2


<備考>
〇3月11日からウグイスの囀りをわきみず池周辺で聞くようになった。
〇昨年12月までツグミ類を観察できなかったが、2月、3月になりツグミ、シロハラを見
 るようになる。
〇久しぶりにガビチョウの声を聞く。

<アオゲラの老木倒れる>
     
△第2コーポラス前のケヤキの大木が切り倒される。アオゲラが穴を空けた跡が幾つも残
 るアオゲラがお気に入りの老木であった。

●調査日 2019年3月27日(水) 晴れ

<調査結果>
(1)マガモ4(2♂2♀) (2)カルガモ7 (3)キジバト5 (4)ハイタカ1 (5)アオゲラ2
(6)ハシボソガラス1 (7)ハシブトガラス1 (8)ヤマガラ1 (9)シジュウカラ10 (10)ヒヨドリ6
(11)ウグイス2 (12)ムクドリ1 (13)シロハラ1 (14)ツグミ2 (15)キセキレイ1
(16)ドバト6

<備考>
〇あずまや池のカシの木にハイタカが入るが、カラスがちょっかいをだしたので飛び出し
 多摩平方向に飛び去る。下面の白が鮮やかで綺麗であった。昨年の3月にもレンジャクを
 追うハイタカを黒川で観察している。
〇雌雄は不明であったがアオゲラ2羽を観察する。最近声をよく聞くようになった。
〇大池とわきみず池の北側ブッシュからウグイスの声がする。2羽が鳴いているのでない
 か。
〇あずまや池でシロハラを観察するが、そろそろ終認であろう。
〇大池北側の湧水で採食しているキセキレイを久しぶりに観察する。喉の黒い夏羽になっ
 ていた。清流に似合う水辺の鳥である。
 
 △夏羽(喉が黒い)のキセキレイ 3月30日 撮影:岩井満夫さん
 
本会発行の「日野の自然」4月号の巻頭言に黒川清流公園(東豊田緑地保全地域に含まれ
 る)のモズについて投稿したので紹介します。


〇モズがいない、カワセミが帰って来ない、黒川清流公園のいま      金子凱彦
 小さな猛禽といわれるモズは私の最も好きな鳥です。雄も雌も秋から翌春まで単独でな
 わばり(テリトリー)を守り、餌不足の冬を生きのびるのです。餌は昆虫や小鳥です。寒
 い冬の朝でした、首をスパッと切り落としたカワラヒワを足につかんでいるモズを見たこ
 とがあります。まさに猛禽でした。食物連鎖の上位に位置するこの鳥は、雑木林や耕地の
 豊かさを示すシンボル的存在です。東京では絶滅の危険のある鳥に指定されています。
  秋の風物詩ともいえるこのモズの「高鳴き」はよく知られています。なわばりを決める
 ための熾烈な争いをしているのです。雌も雄に負けていません、取っ組み合い寸前になる
 ことさえあります。そして一冬のなわばりが決まるのです。この高鳴きを聞くことによっ
 てその地域の冬の個体数を知ることができます。
  黒川公園東端の中央線から西へ雄、雌、雄の順でなわばりをつくったことがありました。
 境界線がよく分かり観察し易かったことを覚えています。毎年3羽ほどが越冬していまし
 た。ところが2017年秋から翌18年の早春は2羽になり、昨年(2018年)秋からは雌が1
 羽だけになってしまいました。今冬は健気にも?黒川の林をこの雌が守っていました。
  さらに悪いことに毎年繁殖をしていたモズが昨年はゼロになりました。2007年から調査
 を始めて12年になりますが、初めての事件でした。どうしたのでしょう。
  モズは早春から繁殖の準備に入ります。秋の高鳴きとはちがう恋の季節です。寒さが残
 るが春の気配を感じる2月の朝、私の目の前の枝にいた雌のわきにすっと雄が現れました。
 雄は澄んだ声でサブソングを歌い、頭や体を踊るように動かしました。求愛ダンスです。
 雌は知らんふりをしていますが、その場を離れません。雄を気に入ったのでしょう。
  モズの繁殖行動について山岸哲先生の「モズの嫁入り」に興味ある話があるので紹介し
 ます。「冬の単独なわばりを張れるということは、隣り合う雌雄はほぼ同等の力関係にある
 ことを意味しているでしょう。こうした二羽の雄雌はいざ恋の季節が近づいたとき、おそ
 らく、雌も雄もこの深く知り合った憎たらしい隣人に対する敵意を、そう簡単に捨て去る
 わけにはいかないのではないでしょうか。……一番簡単な方法である隣同士での結婚をむ
 ずかしくしている原因なのでしょう」。モズの世界は複雑微妙なのです。
  秋の高鳴きが聞かれず、冬の林にモズの姿なく、春の求愛ダンスもない黒川、何のため
 の緑地保全地域なのでしょう。
  そして昨年の6月過ぎからカワセミの姿が見られなくなりました。河川の汚染により一
 時は“幻の鳥”とまで云われたが復活した鳥です。カワセミの目で見ると黒川の水辺環境
 が変わったのでしょうか?原因は分かりませんが寂しい限りです。モズやカワセミがいな
 くなる! 私のようなpessimist(悲観主義者)は黒川清流公園の将来が心配でたまりませ
 ん。