金子凱彦の野鳥調査  139回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園東端の中央線脇にある「ひょうたん
池」から西へカワセミハウス(2017年4月OPEN)、マンション・ヴィ-クコ-ト豊田、多摩平第6公園、
山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類
と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2019年5月7日(火) くもり

<調査結果>
(1)カルガモ7 (2)キジバト5 (3)アオゲラ1 (4)オナガ1 (5)ハシボソガラス6
(6)ハシブトガラス2 (7)シジュウカラ8 (8)ツバメ1 (9)ヒヨドリ7 (10)ムクドリ19
(11)スズメ2 (12)ハクセキレイ1 (13)ドバト5 (14)ガビチョウ9

<備考>
〇多摩平側からアオゲラの声を聞くが黒川での営巣は不明。
〇ひょうたん池北側でオナガの声を聞くが羽数等は不明、普通は?群れで移動しているは
 ずであるが…。
〇キビタキ等の渡り途中の夏鳥には会えなかった、またウグイスの囀りも5月になり聞く
 ことができなくなった。寂しい限りである。

●調査日 2019年5月14日(火) くもり

<調査結果>
(1)カルガモ4 (2)キジバト3 (3)ダイサギ1(OH) (4)アオゲラ1 (5)ハシボソガラス2
(6)ハシブトガラス2 (7)シジュウカラ3 (8)ヒヨドリ4 (9)ムクドリ22± (10)ハクセキレイ1
(11)ドバト10 (12)ガビチョウ3

<備考>

〇ダイサギ1羽がカワセミハウス上を南から北へ飛ぶ。春過ぎると黒川の池に降りること
 は稀になる。
○大池東側からアオゲラの声を聞くが営巣は不明である。
○黒川公園内の遊歩道に多数のムクドリが降りて採食していた、幼鳥も混じているようだ。

●調査日 2019年5月22日(水) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ3 (2)キジバト5 (3ダイサギ1(OH) (4)オナガ1 (5)ハシボソガラス3
(6)ハシブトガラス2 (7)シジュウカラ3 (8)ヒヨドリ4 (9)ムクドリ14 (10)スズメ8
(11)ドバト6

 
<備考>
〇前回同様にダイサギがカワセミハウス上空を北に飛んだ。
○調査地東端のひょうたん池奥(北側)からオナガの声が聞こえたが姿は確認できなかっ
 た。中央線を渡った南方向の公園では多数のオナガが営巣しているが、黒川公園では繁殖
 記録はない。

●調査日 2019年5月30日(木) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ4 (2)キジバト4 (3)ハシボソガラス5 (4)ハシブトガラス1 (5)シジュウカラ3
(6)ヒヨドリ6 (7)ムクドリ5 (8)スズメ1 (9)ハクセキレイ1 (10)ドバト4
(11)ガビチョウ3

<備考>

〇カルガモはひょうたん池2羽、大池2羽であった。
〇コーポラス前で採食中のハクセキレイを観察する。黒と白の鮮やかな雄であった。キセ
 キレイは5月になり姿を見なくなる。
○本日も鳥影が少なかった。

<特記事項>
黒川公園のあずまや池でカルガモの子が生まれた。上記の調査の時は確認できなかったの
だが…。
 
△カルガモの親子 5月31日 撮影:岩井満夫さん

●当会発行の「日野の自然」4月号の“ひろば”にモズについて投稿したので転載する。

藪(やぶ)がなくなるとモズは棲(す)めない?
                                       金子凱彦

 先月号の巻頭言で黒川清流公園(東豊田緑地保全地域)にモズがいないと書きましが、4
月になっても姿はありません。やはり今年もモズは繁殖をしませんでした。どうして黒川
は嫌われたのでしょう。
 「レッドデータブック東京2013」(東京都環境局)のモズの記載では、東京の区部・
北多摩は絶滅危惧Ⅱ(VU)―絶滅の危機に瀕している―、南多摩・西多摩は準絶滅危惧(NT)
―存続基盤が脆弱な種―、と記されています。南多摩の日野市はNTに入っていますが、緑
地保全地域に指定されている黒川でモズが繁殖しなくなったのは怖いことです。
 またレッドデタ・ブックでは【都における生存に対する脅威や保全上の留意点】として
「開発などにより、丘陵地の低木林や草地、耕作地といった本種の繁殖できる環境が減少
している。現存する繁殖環境は可能な限り保全することや、公園内や耕作地の周囲に草木
類が繁茂する場所が残るように、可能な範囲で草刈り頻度の調節を行うなどの配慮をする
ことが望ましい
。」(下線は筆者)と記されています。モズが棲めなくなった原因は多々
あると思いますが、極度の下草刈も原因ではないでしょうか(写真①)。
 
①黒川清流公園の見事な下草刈り2018年3月 

 昨今雑木林において生態的留意に全く関心がない、草を刈ることが自己目的のようにな
っている下草刈りがあるように思えます(関係諸氏には御免なさいね)。たとえば写真②
ようにクマザサをなぜ刈らなければならないのでしょう。以前にも書いたが藪がないと困
る野鳥たちがいるのです。このクマザサは多くの生きもたちが利用しているのです。生き
もののことも考えてほしいものです。
    写真② 柵の内側にクマザサが繁茂してい
た(左にかろうじて残っている)、柵があ
るのになぜ刈るのか?この藪からウグイス
の声を聞いたこともあったが今はない。
2019年4月
 
 もう一つ先月の巻頭言でカワセミが帰って来ない、と書きましたが4月になってもカワ
セミは姿を見せません。なぜ嫌われたのでしょう。気になることがあります。黒川公園北
側の台地で施工されていた高層マンションに伴うボーリングです。2018年の7月上旬にあ
ずまや池で薄い白濁が確認され、7月21日にわきみず池が白濁しました(写真)。原因はベ
ントナイト溶液が地下水をたどって池に流れ出たということです。実はカワセミは5月中
旬まで黒川の池で毎月観察されていたのです。前年の2017年も周年姿を見入ることのでた
常連の鳥でした。あくまで推測ですがカワセミはベントナイトの危険(人体には影響がな
いと云われていますが…)を察知して黒川の水辺を避けたのではないでしょうか(大胆な
推測ですが…)。カワセミはかつて河川の汚染により東京から絶滅しそうになった経験を
もつ水辺の鳥なのです。
 なおマンション工事の影響で涸れたと推測される湧水は未だに水が出ていません。涸れ
たままでよいのでしょうか。このままで工事を始めるのでしょうか。これも心配ですね。
  
 
 △白濁したわきみず池、ここにカワセミが飛び込めますか? 2018年7月23日