金子凱彦の野鳥調査  151回
                               日野の自然を守る会 金子凱彦

●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
 同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京
都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清
流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約
60,000㎡の雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所
から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池
」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園東端の中央線脇にある「ひょうたん
池」から西へカワセミハウス(2017年4月OPEN)、マンション・ヴィ-クコ-ト豊田、多摩平第6公園、
山王下公園、清水谷公園の池まで約1.7kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類
と数を記録します。


黒川清流公園内の表示板に説明を増やし作成

●調査日 2020年5月5日(火) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ7 (2)キジバト4 (3)ハシボソガラス2 (4)ハシブトガラス1 (5)シジュウカラ5
(6)ツバメ4  (7)ヒヨドリ3 (8)ウグイス2 (9)ムクドリ7 (10)キビタキ1
(11)ハクセキレイ2 (12)ドバト5 (13)ガビチョウ3

<備考>
〇ウグイスは健在である、元気に囀っている。
〇5月の連休に入りキビたちの声をたびたび聞くようになった。次から次へと黒川を通過していくのであろう。
 
●調査日 2020年5月13日(水) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ10 (2)キジバト4 (3)ハシボソガラス2 (4)ハシブトガラス1 (5)ヤマガラ3 
(6)シジュウカラ11 (7)ツバメ2 (8)ヒヨドリ7 (9)オオヨシキリ1 (10)ムクドリ14  
(11)キビタキ1 (12)スズメ1 (13)ハクセキレイ2 (14)ドバト2 (15)ガビチョウ1

<備考>

〇多摩平第3緑地でヤマガラのファミリーに会う、成鳥1羽、幼鳥2羽であったが、幼鳥はまだいたのか?
 この緑地はヤマガラをよく観察する所であった。東京ではヤマガラが増えているとのことであるが、黒川
 でも多くなった。
 ヤマガラの給餌を岩井さんが撮影したので下記で紹介する。
〇清水谷公園でギョギョシ、ギョギョシと大声で鳴くオオヨシキリの声を聞く。本種は開けたアシ原に渡来す
 る夏鳥である。一時的に立ち寄ったようだ。浅川では減っている鳥で、私は今季まだ浅川で本種の声を聞
 いていなかったので、ここで聞けるとは驚きである。
〇今日もキビタキの声を聞く。
〇前回までウグイスの声を聞いたが今回はない、黒川公園を去ったようだ。矢張り黒川はウグイスにとって
 繁殖する環境にはないようだ。
 
 △ヤマガラの親(右)が幼鳥に給餌 5月16日 黒川公園 撮影:岩井満夫さん
 

●調査日 2020年5月22日(金) くもり

<調査結果>
(1)カルガモ7 (2)キジバト3 (3)カワセミ1♀ (4)ハシボソガラス5 (5)ハシブトガラス1
(6)シジュウカラ5 (7)ヒヨドリ6 (8)ムクドリ3 (9)スズメ3 (10)ハクセキレイ1  
(11)ドバト3  (12)ガビチョウ1

<備考>
〇黒川公園入口(公園の東端にある)の柵にハシボソガラスの幼鳥2羽がじっとしていた。
 わきにあるクヌギの大木から巣立ったのであろう。南側のコーポラス屋上にはこの幼鳥たちを見守るよう
 に成鳥が見守っていた。ハシボソガラスはハシブトガラスのように人を襲うことはあまりない。
 ⇒本年は4羽のハシボソガラスが巣立ったようである。
〇清水谷公園の池でカワセミの雌が水浴びを繰り返していた、そして小魚をゲット、その場で飲み込む。
 それから池の奥に消えた。休息?行動不明。

<特記事項>
下の写真は5月25日に岩井さんが清水谷公園の池で撮った写真である。魚の頭を前にして池の外に飛び
立ち、4分後には戻ってきた。近くに巣立ち近い雛がいるようだが営巣場所は不明である。
 
 △5月25日 アブラハヤをくわえて池の南側に飛び去る
 
 
 △5月29日も運んでいた
  
●調査日 2020年5月26日(火) 晴れ

<調査結果>
(1)カルガモ6 (2)キジバト1 (3)ハシボソガラス4 (4)シジュウカラ5 (5)ヒヨドリ5
(6)ムクドリ8 (7)キビタキ1 (8)スズメ5 (9)ハクセキレイ2  (10)ドバト4
(11)ガビチョウ2

 
<備考>
〇キビタキの囀りを近くで長時間聞くことができた。今春は例年より通過が多いようだ。
〇これからの黒川公園は種数、個体数とも少なくなる季節だ。
 
 △黒川公園で囀るキビタキの雄 5月12日 撮影:岩井満夫さん

日野の自然を守る会発行の「日野の自然」6月号で黒川清流公園のアオゲラとアオジを紹介した
ので転載します

黒川清流公園の足環の付いた野鳥 たち
                             写真;岩井満夫 文:金子凱彦

 長年日野市内で野鳥の写真を撮っている岩井満夫さんが東豊田緑地保全地域内の黒川清流公園
(以後黒川公園もしくは黒川)で標識調査用の足環の付いたアオゲラ、アオジを撮影したので紹介をします。
 
〇鳥類標識調査Bird Banding(バンディング)
 1羽1羽の鳥が区別できるように、捕獲した鳥の足に記号や番号が刻印された足環を付けて放します。
その後の回収(再捕獲や死体の発見)によりその鳥の移動や寿命を知ることができる調査です。
 これは環境省が山階鳥類研究所(我孫子市)に委託している事業で、調査を行う人をバンダー(鳥類標識
調査員)といい、そのための資格が必要です。
〇キツツキ科の鳥アオゲラ
 全長29cmの大きいなキツツキの仲間ですが、かつて黒川公園の林にはいませんでした。1980年代前半
には生息の記録はなく、1990年代になり確認されるようになりました。そして2000年代に入り黒川では留鳥
になり繁殖をするようになりました。同じように都内では1990年代に多摩地区の平地からから都内23区に進
出し、現在都心の大きな公園でもその姿を見ることができるようになりました。森林の鳥・キツツキが大都会
の都心に姿を現したということで当時話題になりました。なおアオゲラは日本にしかいない「日本固有種」です。
〇足環の付いたアオゲラ
 2013年11月30日、岩井さんは黒川公園で足環付のアオゲラの雄を発見し撮影をしました。以来足環付のア
オゲラを追っています。このアオゲラの謎を知りたく岩井さんは山階鳥類研究所に足環の写真を送り、問い合わ
せをしたところ回答がありました。写真で分かったことは末尾の58のみが読めて、データーは8件でした。
東京2件(あきるの市、多摩市)、群馬、新潟、和歌山、島根(2件)です。東京の2件はいずれも2013年以前の
バンディングで放鳥したとのことです。黒川の個体は東京の2件のうちのどちらかでしょうか、数字がもっと読め
るようになれば、もっと詳しいことが分かるでしょう。
 ただはっきりしていることは2013年の初冬から2020年の早春まで(3月16日に足環付を撮影する)、黒川周辺
で8年近く生きているということです。そして繁殖をしているということです。
 
 
 △アオゲラの親子、右足に足環の付いた雄(左)と巣立った子ども(右)
 黒川清流公園  2017年7月24日
 
 △足環部分の拡大、鋭い爪で垂直な木にとまっている

〇アオゲラの繁殖の記録
 アオゲラは東豊田緑地保全地域や隣接する多摩平の森や日野市役所前の中央公園などを行動圏にして
いるようです。足環付雄のペア相手は毎年同じ雌なのかは不明です。
  

〇今年(2020年)も早春から黒川公園でアオゲラの声が聞こえます、繁殖するのでしょう。
足環の観察を始めてから8年目の春です。ただ黒川を取り巻く環境は日々変わっています(悪くなっている)。
雑木林の象徴ともいえるアオゲラがいつまでも黒川公園で生息できることを願うばかりです。

〇アオジは漂鳥(ひょうちょう)
 ホオジロ科の仲間のアオジ(全長16cm)はスズメと同じほどの大きさです。「本州中部以北で繁殖し、北海道
では低地や海岸の低木林にもいるが、本州中部では標高1000mぐらいの明るい林、林縁等で繁殖する。秋冬
には暖地に移動し、市街地の公園や庭にも来て、やぶの中でツッ、ツッと鳴き、暗い木かげの地上で餌をとる」
(高野伸二著フィールドガイド「日本の野鳥」より)
〇足環付のアオジ
 2019年11月9日に岩井さんは黒川公園で右足に足環の付いたアオジを観察し撮影しました。翌12月12日、
2020年1月3日、1月27日、2月19日、3月4日、3月13日に撮影をしています。私は2月27日にあずまや池西側の
遊歩道で2羽のアオジの内1羽に足環が付いているのを確認しました。道の脇までネザサが茂っており毎年アオ
ジが渡来する定番の場所ですが、足環付は初めてでした。
 岩井さんはアオゲラと同じように山階鳥類研究所に足環の写真を送り、問い合わせをしたところ回答がありました
 写真によると2AK-370?3まで読めて、2018年10月に北海道の釧路でバンディングされた個体と分かりました。
初めて黒川で撮影されたのが2019年11月で、放鳥されてからほぼ1年後です。北海道から海を渡り本州へ、そし
て関東へ、そして黒川公園へ、どのようなコースでやって来たのでしょう、知りたいですね。
 
 △右足に足環の付いたアオジ  黒川清流公園 2020年1月27日
 
 △足環部分の拡大、3の刻印が見えます

〇黒川公園で越冬するアオジ
 アオジは秋になると毎年やって来ますが数は多くありません。ネザサやクマザサなどのやぶを好み地上で
餌をとります。今回の足環付のアオジはカワセミハウス(東豊田3丁目)、黒川公園内のあずまや池周辺で11月
から3月まで観察、撮影されています。繁殖地から渡って来て一旦越冬場所を決めるとそこから移動しないよう
です。土地(環境)への執着が強いのではないでしょうか。さらに2~3羽(内1羽は足環付)でいることが多く、
同じメンバーで越冬しているのではないかと推測します。
 こうしてみると冬季の草刈りも野鳥たちのために慎重に、環境に配慮してほしいものです。鳥には羽があり
自由気ままに飛んでいるように見えますがそうではないのです。そして越冬地で充分に餌をとれないと春の繁殖
にも影響すると云われています。釧路からの遠来の客を来年もよき環境で迎えたいものです。
 
 △下草がきれいに刈られたあずまや池のわき(右端が池の柵)写真:金子