金子凱彦の野鳥調査  第2回
                                      日野の自然を守る会 金子凱彦


●東豊田緑地保全地域の野鳥調査
<調査地とコース>
同保全地域は日野市のほぼ中央部に細長く広がる日野台地の段丘崖の一部で、1975年に東京都により緑地保全地域に指定されました。東豊田3丁目、多摩平2丁目、7丁目に隣接した黒川清流公園、多摩平第6公園、清水谷公園の約60,000uの雑木林です。黒川清流公園の崖下には数カ所から湧水が流れており、池が4カ所あります。東から「ひょうたん池」、「大池」、「わきみず池」、「あずまや池」の名が付いています。
調査は黒川清流公園の東端の中央線脇にあるひょうたん池から西へ黒川地域広場(汚水処理場跡地)、第6公園、山王下公園、清水谷公園の池まで約1.5kmのコースを1時間で歩き、その間に出現した野鳥の種類と数を記録します。


(写真)

12月の大池。日中はマガモとカルガモが休息や採食をしている。またカワセミの姿を見ることもあります。


調査日 2007年12月8日、晴れ、無風

<調査結果>
(1)アオサギ1(上空通過) (2)マガモ22(♂10♀12) (3)カルガモ51 (4)ツミ1 (5)キジバト7 (6)キセキレイ1 (7)ハクセキレイ1 (8)ヒヨドリ14 
(9)ジョウビタキ1(♀1) (10)ツグミ1 (11)ウグイス5 (12)エナガ2 
(13)シジュウカラ10 (14)メジロ18 (15)イカル10 (16)ムクドリ1 (17)オナガ1 
(18)ハシボソガラス2 (19)ハシブトガラス6 (20)ドバト8 (21)ガビチョウ3

<備考>
・林の中でカラスに追われるツミを発見する。カラスは声をたてず一直線に追いかけたがたが、ツミは突然旋回し多摩平側に逃げた。静寂の中の一瞬の出来事だったが、久しぶりに見るツミの姿にわくわくした。やはり猛禽類は魅力的だ。
・黒川清流公園西端のあずまや池でジョウビタキの雌を初めて観察する。調査地内で確認したジョウビタキは、雄3羽、雌1羽の計4羽になる。渡ってきた当初の11月には電線等の目立つ所で鳴いていたが、最近はその姿をなかなか見ることができなくなる。行動圏が調査地内の林だけではないのでセンサスで遭遇するのが難しいのか。
・頭上からツグミの声が聞こえたのでケヤキの大木を見上げると、胸を反らした独特の姿勢で葉の落ちた梢に止まっている。胸の黒斑に朝日が当たり鮮やかに浮き上がって見えたが、渡って来たばかりなのでまだ遠慮がちに休んでいるようにも思えた。本日の調査で確認したツグミこの1羽だけです。
・久しぶりにイカルを観察する。10羽程の群で木に残った実を食べていたが、大きな嘴の黄色が鮮やかでした。かつてイカルは多摩平では1年中その姿や声を聞くことのできる鳥でしたが最近ではほとんど観察することができません。

<雑感>
12月に入りわきみず池で偶然ルリビタキを見ました。本日の調査ではこのルリビタキを期待し丹念に付近を観察したが、発見することができませんでした。声も聞こえません。諦めきれずセンサス終了後再び池に戻り、30分間待ったのですがやはりだめでした。クヌギの横木に座った背に心地よい朝日を浴びながら、憧れの恋人をひたすら待つ老人の心境でした。


●調査日 2007年12月18日 晴れ、無風

<調査結果>
(1)マガモ20(♂11♀9) (2)カルガモ58 (3)キジバト5 (4)コゲラ5 
(5)
キセキレイ2 (6)ビンズイ1 (7)ヒヨドリ21 ()ルリビタキ1 
(9)ジョウビタキ2(♂2) (10)ツグミ4 (11)ウグイス2 
(12)エナガ5(調査終了後10) (13)シジュウカラ27 (14)メジロ37 
(15)アオジ2 (16)シメ1 (17)スズメ1 (18)ムクドリ6 (19)ハシボソガラス1
(20)ハシブトガラス3 (21)ドバト6

<備考>
・あずまや池に通じる桜並木の植え込みで採食しているアオジを観察していると、桜の横枝にビンズイが飛来する。本調査地では珍しい。ただ散歩の人が近づいたので人家の屋根を越え中央線方向に飛び去ってしまった。黒川に再び戻って来るであろうか。
・メジロとコゲラがマユミの種子を採食するのを山王下公園で観察する。メジロは赤い種子を逆さになったり、首を上に伸ばして下から食べていた。コゲラはハッキリと観察できなかったが、花に嘴を向け、次から次へと花を移動している行動からメジロと同じように種子を食べていたのではないか。今後機会があれば再度調べたい。


マユミの実を食べるメジロ

・黒川公園では柿を食すツグミを観察していると、コゲラが現れ柿の付いている横枝から逆立ちになってこの柿を食べようとした。すると甲高い声を上げながらヒヨドリが現れ追い払われてしまった。この柿は鳥たちに突っつかれてボコボコです。
・清水谷公園西端の林でメジロ20羽前後、シジュウカラ3羽、エナガ3羽の混群に出会う。また黒川公園では10羽と6羽の群れにも会う。本日はメジロが圧倒的に多かった。・センサス最終地点の清水谷公園の池でルリビタキを観察する。池に近づくとギュッギュッと鳴き声が聞こえ、池を囲むフェンスから笹藪に向かって飛ぶ姿を見ることができた。背中のるり色が鮮やかです。なおこの池の周辺には毎年ルリビタキがやって来きます。
・調査終了後、第2コーポ西端前のカエデに止まるエナガ10羽前後とシジュウカラ3羽、コゲラ1羽の群に遭遇する。調査ではエナガは5羽数えただけでした。


●調査日 2007年12月25日 くもり、無風

<調査結果>
(1)アオサギ1 (2)マガモ23(♂11♀12) (3)カルガモ61 (4)キジバト4 
(5)キセキレイ2 (6)ハクセキレイ2 (7)セグロセキレイ1 (8)ヒヨドリ12 
(9)モズ1 (10)ジョウビタキ1(♂1) (11)ツグミ2 (12)ウグイス1 
(13)シジュウカラ3 (14)メジロ5  (15)アオジ1 (16)イカル12 
(17)ムクドリ3 (18)ハシボソガラス2 (19)ハシブトガラス3  (20)ドバト11 
(21)コジュケイ1 (22)ガビチョウ1

<備考>
・多摩平方向から林すれすれにアオサギが現れ大池に向かうが、3羽のカラスが鳴き騒ぐので急上昇し豊田コーポラスを越え中央線方向へ去ってしまった。大池に降りるつもりであったのか。やはり目の前を飛ぶアオサギは大きかった。
・カルガモはひょうたん池7羽、大池42羽、わきみず池2羽、あずまや池10羽の計61羽と多かった。ひょうたん池では給餌をする人が数人いるので、池に近づくとカモたちはすぐ足下まで寄ってくる。
・本日の調査でウグイスの声(笹鳴き)を聞いたのは1回だけです。12月8日には5回、18日は2回、今回は1回だけであった。この間にウグイスの声がした笹藪が広範囲に刈り取られている。笹が無くなったから笹藪に生きるウグイスが激減、と短絡的には結びつかないであろうがウグイスにとって住みにくくなるのは確かだ。
・本日は群に会わなかったので、観察したシジュウカラは3羽だけになった。黒川公園で1羽と清水谷公園の池で見た2羽だ。メジロは5羽の群に会っただけで、前回(12/18)に比べて非常に少なかった。シジュウカラやメジロたち混群は黒川公園を越えた広い範囲で行動をしているのであろう。
・イカルの群に遭遇する。最初は逆行のためシルエットだけで分かりにくかったがイカルであった。次から次と現れ10羽は越えた。木の実を盛んに採食している。なお調査終了後、山王下公園でも1羽観察した。

<雑感>
久しぶりにコジュケイの鳴き声を聞く。日野市内にかろうじて残された段丘崖の雑木林、その急斜面にかろうじて残っていた笹藪から聞こえてきた。地上生活するコジュケイには下草がきれいに刈られた見通しの良い所は住みにくい。敵から身を隠す場所が無くなるのだ。そうなれば黒川の地から去るしかない。ウグイスは藪を好み、アオジ、シロハラ、トラツグミも身を隠す薄暗い藪を好む。トラツグミは数年前からその姿を見ることができなくなった。都市の雑木林の管理における野生動物との共生について今後論じたい。


掲載履歴
第1回 2007年11月調査記録